記事公開日
腰壁の高さが揃っているのはなぜか

店舗やオフィスの壁をよく見ると、腰のあたりの高さで仕上げが切り替わっていたり、その高さで止まった低い壁があったりします。こうした壁を腰壁と呼びます。
腰壁の高さは、建物が違ってもだいたい似た高さに揃っていることが多いものです。そうなるのには、いくつか理由があると考えられます。このコラムでは、施工する側から見た理由を一般論としてお伝えします。
腰壁には2つの使われ方がある
腰壁という言葉は、2つの意味で使われます。
1つは、壁の下のほうだけを別の材料で仕上げたものです。人や物がぶつかりやすく、汚れやすい部分を、傷に強い板やパネルで守ります。もう1つは、天井まで届かせず、腰くらいの高さで止めた低い壁です。受付まわりや、空間をゆるく区切りたい場所で使います。
見積では、どちらの意味の腰壁かで出てくる項目が変わります。仕上げの切り替えなら仕上げの材料と見切りの部材、低い壁なら下地から作ることになります。どちらの場合も、高さを決めるときに考えることは似ています。当社が手がけたある店舗では、腰壁の高さを1,100ミリにしました。これは一例で、用途によって高さは変わります。
材料の寸法と、切り無駄
内装に使う板やボードは、決まった寸法で出回っています。ベニヤであれば1,820×910ミリが基本の大きさです。
高さを決めるとき、材料をどう割り付けるかは考える材料の一つになります。1枚の板から無駄なく取れる高さに寄せれば、切りくずが減り、材料の量も読みやすくなります。
ただし、腰壁の高さが材料の寸法だけで決まるわけではありません。たとえば1,100ミリは、材料の寸法からそのまま出てくる数字ではありません。材料の都合は理由の一つにすぎず、次に挙げる施工や用途とのかね合いで決まることが多いと考えています。
施工のしやすさ
同じ高さが続いていると、施工がしやすくなります。高さの基準の線を一度出せば、部屋をぐるりと同じ寸法で回せます。仕上げの切り替わりに入れる見切りの部材や、低い壁の上端に載せる笠木も、通しで納めやすくなります。
反対に、場所ごとに高さが違うと、そのたびに測り直し、部材を切り分けることになります。見積では、腰壁の下地、仕上げ、上端の納まりがそれぞれ項目として出てきます。高さの切り替わりが多いほど加工の手間と部材が増え、ここで金額が変わります。
同じ内装で複数の店舗を出す場合も、高さを決めておくと、図面を描くときも現場で施工するときも迷いが減ります。
机や家具の高さ、視線の遮り方
用途も高さを決める大きな理由です。
・机やカウンター、棚などの家具の高さと合わせると、見た目が揃い、壁と家具の間に半端なすき間ができにくくなります
・椅子の背やワゴンが当たる高さを守る目的なら、その高さより上まで仕上げることになります
・低い壁で区切る場合は、座った人の目線を隠すか、立った人からも見えにくくするかで、ちょうどよい高さが変わります
受付で手元を隠したい、施術スペースを少しだけ目隠ししたい、といった使い方によって、同じ腰壁でも答えは変わります。店舗では、壁の下のほうに台車や掃除道具が当たって傷みやすいこともあります。腰壁を傷に強い材料で仕上げておくと、後で張り替える範囲を小さくできます。
低い壁で区切る場合は、天井まで閉じる壁との違いも知っておくと判断しやすくなります。天井まで閉じる間仕切りにすると、その部屋に空調や照明が必要になり、消防設備にも関わってきます。天井の手前で止めればそれらは不要になりますが、音は通ります。腰壁で区切るのは、この中間にあたる考え方です。詳しくは、別のコラム「オフィスの間仕切り工事で、後から変えられる作り方と、変えられない作り方」でも触れています。
高さに迷ったら、ご相談ください
腰壁の高さは、決まった正解があるものではありません。使い方、置く家具、見せたいものと隠したいものによって変わります。高さを変えると、上端の納まりや家具との取り合いも変わるので、図面の段階で決めておくと工事中の手戻りが減ります。
当社では、図面がない段階でもご相談をお受けしています。どんなふうに使いたいかをお聞かせいただければ、現地を見てから高さと納まりをご提案し、明細でお見積りをお出しします。お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
代表取締役社長 佐藤 繁(1級建築施工管理技士)



